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穏やかな午後の礼拝堂で、賀来神父は掃除にいそしんでいた。
掃除にあの丈の長い神父服は邪魔なのと、
この後の予定もあり、ごく身軽なシャツにジーンズだ。
バケツできゅっ、と雑巾を絞る。
(よし、これで掃除は終わり。あとは…)
今日の予定について色々とシミュレーションしていると、礼拝堂の扉がギギ…と音をたてる。
信徒のかただろうか、と振り返り
「こんにち…」
挨拶をしようとしていた、賀来の声が止まる。
開いた扉に寄りかかる、1人の男。
まるでモデルのように、すらりとした体躯。
逆光で、顔ははっきりとは見えないが、すぐに分かる。
「…なんだ結城か。」
「なんだとはつれないな。せっかく大事な計画の…。」
寄りかかっていた扉から、改めて賀来の方へ歩いてくる結城。
「あー、うん、分かった分かった。」
しかし賀来は、結城の話を遮り…がしっと結城の肩を掴む。
何だ?と、賀来を見るとその表情は結城を見上げて微笑んではいる
…が、どこか黒いにやりとした笑み。
思わず結城は一歩後ずさるが、賀来の手は離れない。
「そんな事より結城、お前私服だな? 休みなんだな?
それでここにいるって事は時間あるな? っていうか、作れ、うん。 ちょっと手伝って。車出せ。」
かなりの早さで一気にまくし立てる賀来。
「あ? お、おい?」
とても珍しく呆気に取られている結城。
途中、命令形が入っていたのにも気がついてない。
「さー行こうか。」
そのままずるずると引っ張られていった。
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