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「ごめん、大丈夫?」
心配そうな顔で謝りながら美姫が床でくたばっている俺を覗き込む。
そう思うなら始めからやらないでほしい。
と、思いつつも不可抗力とはいえ、スカートを覗いてしまったのは悪いと思う。
「……もう、ダメ…………死にそう……抱きしめて」
「………………バカ……」
顔を赤く染めつつも美姫は俺を怪しい手つきで抱き寄せた。
髪からは仄かにシャンプーの香りがした。
この寮でこの匂いのシャンプーを使うのはアイツしかいない。
普通、風呂場にある備え付けのシャンプーを使うのだが、アイツは自分で持参しているからだ。
そう、美姫じゃなく、アイツだ。
「いい加減離れてくれ、キュラ」
「えー、いつから気づいてたの?」
俺がキュラと呼んだ、美姫のフリをした女を半ば強引に引き離す。
スーッと顔や体型が変わっていった。
腰までの長さの綺麗な黒髪は一つに結わき、ポニーテールにしていて光を浴びて神々しく光り。
胸は小さいが、身長は高めでスタイルは良く、健康的な美しさがにじみ出ていた。
キュラは名残惜しそうにしていたが今は関係ない。
「まず第一に、美姫は白の無地は穿かない!! 主にシマや水玉を穿いているんだぁああ!!」
「なんで!? なんでそんなことを知ってるの!?」
「次に、抱きつかれたときの胸のサイズが本来のサイズより約1㎝小さかった!! 俺は一目見ればその女のスリーサイズがわかるんだぁああ!!」
「なんて、なんて要らない能力なの!?」
「そして最後に、この寮でこの匂いのシャンプーを使うのは一人しかいない!! それは…………お前だぁあああ!!」
「!! 最後だけまともな推理だった――――!!」
そんな風に二人でコントをやっていると、後ろに誰かの気配がした。
「……あの、私…………」
そこには正真正銘の美姫が顔を真っ赤にしながら立っていた。
「……私、時々は白も…………」
「……ああ、そういや先月の二週目の金曜は白だったね」
そうだそうだ、そうだった。
「なん……で……その事を?」
どんどん声が小さくなって美姫は顔を赤くし、うつむいてしまった。
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