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「……」
小汚ない路地裏の隅っこに建つ、これまた落書きやゴミだらけな小汚ない事務所内で、何とも似つかわしくない女子高生が俯きながらソファに腰掛けている。
彼女の名前は、小日向舞子、十七歳。
近くにある女子高に通っているとの事で、ここにはスマホで偶々サイトを観かけたため、藁にも縋る思いで尋ねたのだと説明してくれた。
――のは良いのだが、何故かそこから先は、俯いてしまい何も喋ってはくれなくなった。
目の前に座るのは事務所の主である、前髪を深紅のメッシュに染め上げた青年だ。
柔らかそうな髪質は、ハードなワックスで固く仕上げているのか、今日はつんつんに尖っていて、その毛先を横に、無造作に流している。
デスクに着くのは、瓶底眼鏡をかけ、ぼさぼさの茶髪頭な、一見少年に見えなくもない青年。
そして、切れ長の瞳が近寄り難い雰囲気を醸し出している、さらさらストレートヘアの、二人にお茶とお茶請けを出している美人なお姉さんだ。
「……用件は? まさかあんた、んなとこまできて、自己紹介して終わりじゃあねぇよなぁ?」
俯きながらも、無言のまま頷く少女は、しばし迷う素振りを見せた後、ようやくの事で顔を上げる。
「あの……。ここ……」
そうして、それだけを絞り出すように呟くと、再び黙り込んでしまう。
何かに思い詰めてきたのは確かなようだが、サイトには特別な方法でしか辿り着けず、尚且つ内容は非常に胡散臭い。
観て、きたは良いのだが、情報を信じてぺらぺらと喋ってしまって大丈夫なのか、その辺の判断がつきかねているのだろう。
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