第一話・―何でも屋、壊児―

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 寂れた街中の片隅で、闇が支配する中に影が揺れる。  セーラー服を着こなした少女の表情が、月の乏しい明かりに照らされて、不安気に見える。  アスファルトに座り込み、一度身体を震わせるのに、その前に立つ人影が小さく笑う。  深紅のメッシュを前髪に入れた、耳にかかる長さにまとめた黒髪は、まるで闇に溶け込むようだ。  切れ長の鋭いダークグレーの瞳は、近寄り難い雰囲気を醸し出している。  ブラックの革製ジャケットに、同色のタートルネック、そしてダメージジーンズをまとう青年が少女を見据えた。  すると、それまで向けていた栗色の瞳を咄嗟に逸らした少女に、青年が手を翳すのだ。  その内に、手の平から淡いピンクの光が発生して、少女の頭から、ピンクのハートがふわりと出てきた。  青年は、宙に浮く“それ”を、手の平を返し乗せるように浮かすと、しばし眺める。  煌めくハートはゆらゆら浮いて、幻想的な風景を作り出していたが、やがて見飽きたように握り潰してしまったのだ。
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