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まるで少女があげた悲鳴のように、硝子が割れる金切声と共に、ハートが跡形もなく砕け散る。
それと同時に、糸の切れたマリオネットのように、少女がどさりと、アスファルトに倒れて身動き一つしなくなる。
全てはドラマの中のワンシーンのように、ゆっくりとした動きで、青年が地面に跪いた。
「……大丈夫か?」
低く、聴く者を魅了する魔力でも備わっていそうな、甘い声音だ。
青年は優しい手付きで抱き起こしながら、まだ反応のない少女に再び話しかける。
「大丈夫か?」
「……ん」
今度は強く、やや大きな声で問いかけると、ようやくの事で瞳がうっすらとひらく。
だが、それでもしばらくは返答もなく、少女は何故、自分がここにいるのかすら理解していない様子であった。
「あんた、倒れてたんだぜ。物音がしたから駆け付けてみて、本当に良かった」
「……倒れて……? あの、私……」
ゆるゆると起きあがり、長く柔らかな髪を揺らす少女は、必死になってこうなってしまった経緯を思い出そうとしているようだ。
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