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――数日前。
「聞いているのかい!?」
とある場所に建つ、落書きと埃、ゴミが散乱する事務所内にて、耳にかかるまでの黒髪で、前髪の一部を深緑のメッシュに染めた中年男性が、スチール製のデスクを叩く。
辺りに小気味良い音が響くが、そこにいる誰しもが気にする素振りすら見せなかった。
中年男性の目の前に座るのは、いかにも怪しいゴシップ雑誌から目を離さない、前髪を深紅のメッシュに染めた青年だ。
他には瓶底眼鏡をかけた、茶髪にボサボサ頭の一見少年風な青年と、切れ長の瞳が近寄り難い雰囲気を醸し出している、さらさらストレートヘアの女性とがいる。
「聞いているのかい!?」
比較的狭い事務所内にて、よもや聞こえていなかったとは思っていないだろうが、デスクを叩き繰り返す中年男性に、雑誌から目を離さない青年が顔をしかめる。
「煩ぇな。商売の邪魔すんじゃあねぇよ」
「商売って……! 商売って……! 人のモノを壊すのが商売なのかい!? そんなの」
「煩ぇ。狭い事務所だ。叫ばなくても聞こえてんよ」
憤る中年男性が、きっちりとグレーのスリーピーススーツを着こなしているのに対し、青年は髑髏ライダーがプリントされたロンTに、ダメージジーンズといった、実にラフな格好でいる。
これだけでも、性格の差は顕著に出ているのだが――。
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