第一話・―何でも屋、壊児―

6/8
前へ
/22ページ
次へ
「大体よぉ。ここきて契約が成立した時点で、相手からは破壊の許可もらってんだよ。つか、そっちこそ人が破壊してきたもん、持ち主の許可なく修理していきやがって。お陰でこっちは良い迷惑だ」  がしがしと髪を掻き上げながら、つらつらと文句を言ったところで中年男性が、ぐっと言葉に詰まる。  それを良い事にして、青年が続けた。 「最近なんかは、顧客の中から詐欺だっつー苦情も出てんだぞ。俺が破壊した端から修理して、また金ふんだくるつもりだろうってな。てめぇ、俺達とグルだと思われてんぞ」  ものの見事な反論には、さすがの中年男性もぐうの音が出ないらしく、最初の勢いも消沈してしまい、そのまま黙り込んでしまう。 「って訳だから、もう二度と事務所にくんな。さっさと失せろ」 「破壊するばかりが、解決方法じゃあない筈だよ」  まるで犬でも追い払うみたいに、わざとらしく立ち上がり、事務所のドアを開けて退出を促した青年に対して、納得出来ない様子の中年男性が食い下がる。 「……」 「君は、そうやっていつも、何でも破壊して、それで満足なのかい……?」 「お前には一生分かんねぇよ。……誰にだってなぁ、壊したいくらいに、消し去りたい記憶や物、過去があるのさ」 「分かった。ごめん。もう、帰るよ」  あくまでも意見を変えない青年に、項垂れた中年男性が立ち上がる。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加