第一話・―何でも屋、壊児―

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 ドアを開けると、往生際悪く立ち止まり、肩越しに呟いた。 「またくるよ」 「もうくんな」  すかさず返す青年に、中年男性を歓迎する意思など見えない。  しかし中年男性も、それ以上の反論をせず、事務所を後にする。 「ったく。毎回毎回、飽きねぇのか、あの馬鹿は」 「少なくとも一ヶ月に四回はやってますもんね。しかも毎回同じ台詞」  中年男性が事務所から退室した途端、それまで貝のように押し黙っていた瓶底眼鏡がくすりと笑う。  余程同じ理由で訪問しているようで、この事務所で先刻のようなやり取りは、既に日常化しているようだ。 「あいつ、暇なのか?」 「何言ってんスか。ヒジョーに残念な事に、こっちの仕事よか、あっちのが流行ってるらしいっスよ。それをわざわざ邪魔する意味が分からず」 「……」  律儀というか、丁寧に答えてくれながらも、益々以て笑い出す瓶底眼鏡に、半ば呆れた表情の青年が唸る。 「マジか。世も末だな」 「こっちのが明らか世の中の役に立つっつーのにねぇ?」  パソコンから片時も目を離さずにいて、先刻から何をやっているのかは不明なのだが、とにかく手元も高速で動いていて、何だか気持ちが悪い。 「取り敢えず塩撒くか」  台所へと姿を消した青年が、茶色いツボを片手に戻ってからドア開け、盛大に塩を撒き散らす。
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