虎牢関に英傑集う~疑問と策謀と~

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望月を納め、距離を長めに離す。そしてそのまま座禅をし、目を閉じる。 夏侯惇「何のつもりだ?」 哀染(これしかないな・・・。) 夏侯惇がなにかしら叫んでいたが無視する。 哀染(視界とは脳が得た情報。ならば『心』の目で見ろ。) 瞬間、漠然と言い知れない感覚がする。地を走る音・・・来る! 夏侯惇「覚悟ッ!」 哀染(まだ遠い・・・。) おそらくは彼女の足音だろう。しかし、まだ動かない。 夏侯惇「だぁぁぁぁあぁぁぁ!」 哀染(彼女の振り上げるタイミングは・・・。) やがて夏侯惇の足音と怒号に混じって聞こえてくる得物の『呼吸』が大きくなる。 ファァァン! 哀染「ここだ!」 足音が鈍り、『呼吸』が深くなった一瞬を見つけ、すぐに抜刀する。その刃の切っ先は、夏侯惇の喉元に突きつけられていた。 夏侯惇「な・・・に・・・。」 額から冷や汗を流す彼女を見据え、静かに宣言する。 哀染「・・・俺の勝ちだ、剣を降ろせ。」 視線をずらして、曹操の方に向ける。 曹操「春蘭、降ろしなさい。この勝負、貴女の負けよ。」 夏侯惇「・・・・・・はい・・・。」 夏侯惇は、一度苦い顔でこちらを睨むと、大人しく大剣を降ろした。俺も彼女が離れたのを確認すると、望月を鞘に戻した。 曹操「それじゃあ哀染。すぐに私について来て。それから、春蘭は後で秋蘭と一緒に閨まで来るように。」 てきぱきと指示を出して話をまとめてしまう曹操。性別が変わろうが、時代の奸雄には変わりないという事だろう。 ~簡易会議室~ 曹操「さて、早速だけど、貴方に条件を忘れていたわ。」 会議室に入って早々、そう告げられる。なんだろう? 曹操「私は貴方を真名で呼んでるけど、貴方は私を『曹操』と呼ぶ。そうよね?」 哀染「・・・そうだが、なにか?」 すると、呆れた顔で俺を見る曹操。どうした? 曹操「私の事も、きちんと『華琳』と呼びなさい。良いわね?」 あまりに意外過ぎる条件に、思考が一時止まってしまったが、それならば御安い御用だ。 哀染「了解だ、条件を飲もう・・・『華琳』殿。」
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