真実の心

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
あぁ、うんざりだ。一国の王子、アッシュはため息混じりに呟いた。アッシュは自分の婚約者を決める為に開かれた舞踏会が嫌で嫌でしょうがなかったのだ。 昔からアッシュは不思議な能力があった。それは人の心が『視える』という力。心の清い者は白く光り、心の汚れた者は黒い靄が視える。しかし、アッシュはその能力がとても邪魔だった。それはこの場を見まわしてみれば分かる事だろう。アッシュの目の前には黒い靄しか見えなかった。この中から自分の相手を見つけるなんて、とうてい無理だった。容姿はあんなにも美しいのにどうして心は醜いのだ。 「こんな物、視えない方が楽だった。」 アッシュはいつも思っていた。そして、その現実に落胆する事しか出来なかった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!