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「なぁ、あと一週間で世界が終わるんだよな...。」
平成が終わり新しく翔化と名が変わって。
――翔化十七年――
今、世界的大ニュースになっていることがある。理由はよく解らないがあと一週間近くで世界が終わるらしい。
こんなことが起こるなんて思ってなかったし想像も出来なかった。
さしずめ映画かアニメか、まさか現実に起こるなんて誰が思っただろう―――
俺は仲瑞隆史(なかみずたかし)、都内の高校に通うごく平凡な高校生だ。
今俺の隣であまり好ましくない本を読みながら黄昏ているのは幼なじみの田邊優也(たなべゆうや)だ。
「なぁ、世界が終わるってことは俺たちみんな死ぬんだよな?」
「いきなりなんだよ..そんなの当たり前だろ?」
「なんで当たり前なんだよ?世界が終わるってどういう事かお前説明できんのか?」
「………」
そんなことを話してたら今日もサボった授業の終わりを告げるチャイムがなった。
「こんな風に世界が終わる時にも誰かが知らせてくれるのかな...」
「..そんなわけ...ないだろ」
「.....だよな」
そう言って優也は柔らかい笑顔を作って見せた。
会話はそこで途切れた。高校に入るまでは真面目で人並みに明るい将来を約束されていたはずの俺たち。しかし世界が終わると偉い学者さんとやらが学会で発表してからだ。
最初は誰も信じなかった。しかし研究が進むにつれてその信憑性は深まって来て今ではもう100%なんだとか...。
解決策はないらしい。今はただ世界の終わりに備えているしかない。
皆は家族と一緒に最後の時間を楽しく過ごしているのだろう。
俺たちには親がいなかった。
小さい頃から施設で育てられて、高校に上がるときに二人で施設を出て一緒に暮らし始めた。
優也が沈黙を破りしゃべり始めた。
「俺正直まだ死にたくないよ。まだまだこれからって時に...」
「それは皆同じ気持ちだよ。」
「...うん」
「帰ろっか」
「...うん」
今日の夕日もいつもと変わらず綺麗で俺たちの町を、世界を染めていた――
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