◆1◆ 古びた廃虚

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元々好奇心が強い性格ではあると思う。 正直めっちゃ怖いと思いつつも、お化け屋敷感覚でこの状況を楽しんでいる自分がいるのも事実だ。 ギシギシと軋む黒い鉄製の螺旋階段の片方を登ると、2階の廊下に出た。 2階はほぼ、下と同じ造りになっている。 違う所があるとすれば、下に玄関がある場所にバルコニーに繋がるガラスの扉があること位だ。 ゆっくりと歩きながら、十字路の左右を確認し、携帯を探していく。 すると何処かから、誰かの話し声が聞こえてきた。 「ふぁぁーおはよう。あれ、これ下の部屋に置いておいた……」 寝起と思われるむにゃむにゃした男の声から察するに、一人ではないらしい。そして間違いなく、 《その部屋に俺のケータイがある!》 どうやら、緊張で思考が麻痺していたようだ。 いる筈も無いと思っていた人の声に、一瞬でかなり安心してしまった。 何故こんな所に人間がいるのかなど考えもせずに。むしろ、 《住んでる人いるんじゃん。使ってないとこは掃除してないんかな?もしや掃除嫌い?》 なんて馬鹿なことを考えていた。 この楽観的な性格のせいで痛い目にあう事もしばしばあったが、どうやらこの17年間は俺を変えてはくれなかったらしい。 声のした部屋は下の携帯があったのと反対側の一番手前の部屋のようだ。 そこの扉が開いていて、中からまた声が聞こえた。 「こら!まったく、イタズラしちゃ駄目って言ったでしょ?」 呆れたような声聞こえてくる部屋に、 「すいませーん……」 と声をかけて覗きこんだ俺ば驚愕し、やってしまったと思った。 この時にばかりは、流石に自分の楽観的な性格と浅はかさを呪った。 そこにいたのは……
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