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「なんかさ、あの街の外れにある廃虚最近『出る』らしいよ」
「まじっ!?てかあれじゃ出ない方がおかしいっしょ」
面白可笑しく怪談話をするクラスの女子達の会話が聞こえてきて、溜め息をもらした。
「はぁ」
正に今からその廃虚に向かおうとしている俺には、とてもじゃないが笑えない。
重い腰を動かし席を立ち、それ以上に重い足を動かし歩き始める。
「おー大輔、今日カラオケ行かね?」
友人の誘いに激しく行きたいとは思ったが、
「わりぃ……今日用事あんだわ」
と謝罪して断った。すると何人かの女子が、
「えぇ!大輔くん行かないのぉ!?行くのやめよっかなぁ」
「あたしもどうしよっかなー?」
などと言い始め、カラオケに行くと思われる男子達からの痛い視線を受けた。
特に仲の良い友人の純(じゅん)が側に来て、
「くそっ!ちょっと背が高くて顔がそこそこってだけでモテやがって」
と小さな声で涙ぐみながら言ってきた。
「そんなんじゃねぇよ」
と反論をし、恨めしそうな純の声と、女子達の言い分に苦笑いをしつつ教室を後にした。
そう……今日の俺にはやらなければいけない事があるのだ。
そんなこんなで意を決して廃虚に向かった。
これほどまでに気が重い放課後が、今まであっただろうか。
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