◆2◆ 出会い

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「でもじゃあ何で、俺は今まで無事に過ごせて来たんだ?」 なんか今いち実感がわかずに、冷静に質問をする俺を見て、 「意外と冷静なんだね。こんな話をしたらもっと動揺するかと思ってたんだけど…」 と、少し驚いたように、でも安心したというかのように言った。 「何かいまいち実感とか沸かなくてさー。」 頭に手をやり、苦笑いをしながらヘラヘラした態度で喋る俺に、 何だかアルトの方が笑いながらも心配そうな顔をしながら答える。 「ここ50年位、磁場の歪みが大分不安定だった。 各地の『穴』が消えたり、なかった筈の『穴』が出現したり。 『穴』の場所が変わる事は今までかなり稀だったんだけど、 人間の急激な科学の進歩によって、磁場の歪みの変動が起きやすくなったみたいなんだ。 50年位前までは、ココ(日本)各地に民族が来る事もしばしばあったんだ。 でもその磁場の歪みの変動が原因で、日本へ通じる『穴』が1つもなくなったんだ」 《なるほど…》 この50年俺が襲われなかったのは、襲う奴がこっちに来れなかったから、という事のようだ。 「でも、最近になってまた『穴』がここら辺に現れ始めてる。 それによって数名、『狂求血者』が入ってきてるのも確認されてるんだ」 つまり、と一呼吸置いて彼は言葉を続ける。 「今君はかなり危険な状況にあるんだ」 その言葉を発したアルトがめずらしく怖い顔をしていたので、俺はビクッとして、固まった。 「…俺はどうしたらいいんだ…………?」 ちょっとヤバいかも…と思い始めた俺は、恐る恐る彼に尋ねると、 「とりあえず…最大限、身を守る術を身につけて貰う必要があるかな……」 と、腕を組み右手を口元に当てて考え込んでいた。 「『狂求血者討伐隊』と連絡をとってみるよ。確か彼等は『夜の月』の保護を行ってたはず…。 今日のところは出来る事もないし、とりあえず家に帰ろうか。 大輔君も疲れただろうし、明日学校もあるんでしょ? 夜のうちは僕が見てるから、安心して寝て大丈夫だよ」 昼間は敵も襲って来ないしね。とにこっ、と笑って言う彼は、なんとなく安心感を与えてくれる。 さっきの戦いぶりからも、絶対助けてくれそうな気がした。 申し訳ないと思いつつも、俺は自分では何にも出来ないので、護衛やら何やら一通りアルトに任せる事にし、家に帰った。
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