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教室を飛び出し、とりあえず、授業をやっていた2階から一階に向かった。
俺達が使っていた教室の真下は理科実験室になっている。
人目に着くとまずいので、実験室が使用されていない事を願いつつ、
土足なので下駄箱の無い玄関を通り抜け、チップの元に向かった…。
幸い、実験室内は電気は消えガランとしていた。
《よかった…使われてない》
と安心した俺は、さっきの木の所まで行き、チップを捜す…必要は無かった。
チップが、さっきいた木の下でグッタリと地面に体を預けている。
「チップ!」
小さく叫びながらチップの傍に駆け寄る。
僅かに反応を示したが、状態はかなりよろしく無いようだ。
初夏の陽気で、制服も夏物に代わり半袖のYシャツに、
灰色と黒と白のタータンチェックの夏用スラックスという薄手の格好をしていた俺だったが、
これまた幸いにも、中に黒いTシャツを着ていた為、
Yシャツを脱ぎ、それにチップをくるみ、なるべく人目に付かないように駐輪場まで走った。
駐輪場でチャリを取り、全速力でこいで、アルト達の居る屋敷へと向かう。
初夏の日差しと暑さのせいで、汗が頬を伝って流れ落ちるのを感じた。
屋敷に着くと門の前にチャリを止め、カゴに入れていたチップを抱えて屋敷への道を走った。
―――ドンドンドンッ
と屋敷の扉を叩いてみるが、反応が無い。
ドアノブを回すと、ギギッという音を立てて扉が開いた。
《不用心だな…》
と思いながらも、廊下を走り抜け、奥の2つの螺旋階段の片方を駆け登り、
2階に着くと、また一直線に伸びた廊下の一番向こうの左側の部屋…アルトの寝室へとバタバタ音を立てて走った。
――――バンッ
と大きな音を立てて部屋の扉を開けると、
「うわぁあ゛あぁぁぁおぁぁ!!」
とキーンという耳鳴りに似た音と共に叫び声が聞こえて来た。
これを聞くのも、もう3度目になる。一番最初は、怖すぎて鳥肌がたったものだ…。
などとしみじみと考えている場合ではない。
寝起きなのかベッドの上で上体だけを起こし、肩を振るわせ薄い掛布団を胸の前で両手で握り締めている、
ふわふわした金髪に、薄い蒼い目をした彼に向かって、全力で走った為ゼェハァと切れ切れな息を整えながら声を掛けた。
「ッ…アルト……落ち着けっ……俺だよ俺!」
なんか、オレオレ詐欺みたいな言い方になってしまったが、
その言葉に彼…アルトは落ち着きを取り戻したようだ。
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