◆1◆ 古びた廃虚

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「あー憂うつー……」 決して噂や外観で怖がっている訳では無い。 只の噂ならそんなに気にはしないし、そもそもお化けとか妖怪とかの類いも信じていない方だ。 しかし、疑わしく思わざるをえない出来事が起きてしまったのだ。 それは、昨日の夜までさかのぼる。 ―――昨夜――― 「おじいちゃん家に煮物のおすそ分け届けてきて」 そんな母の頼みを受けて、俺はじいちゃん家に煮物を届けに行くことになった。 いつものように自転車で住宅街を走りぬけ、じいちゃん家のある森を目指した。 じいちゃん家は町からちょっと離れた所にある森の近くで、森の手前にはちょっとした原っぱと畑が広がっている。 その畑はじいちゃんの所有地で、季節ごとによく野菜をもらったりもしている。 家からじいちゃん家までは、チャリで大体15分くらい。 畑から森までは原っぱが広がり、森の手前にあるじいちゃん家までは、車や人が通るための砂利道がある。 その足場の悪い道を4~5分ほどまっすぐ進むとじいちゃん家に着くのだが、俺は昔からその道が好きではなかった。 なにせ、その道の途中には『あれ』があるのだ。 かなり古い洋館。子供の頃は『あれ』のせいで一人でこの道を通れなかった。 さすがにこの歳になると平気‥むしろ好奇心がわいて来るくらいだ。
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