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「気をつけて帰るんだよ」
と、じいちゃんとばあちゃんに見送られ、無事煮物を届けた俺は元来た道を戻って行く。
帰り道、ふとあの廃虚が目に入った。
《そう言えば、中ってどうなってるんだ…?》
入る気はないが、門の前まで行き、中を覗き込んでみる。
が、暗くてよく見えない…。
数十メートル向こうにある屋敷の様子は門の外からでは伺えなかった。
もうちょっとだけ、と好奇心だけで門を開き屋敷の近くまで歩み寄ってみる。
近くの窓を覗き込もうとしたその時――
「♪チャララーチャッチャララー♪」
俺の携帯が鳴り響いた。その音に驚いて、ビクッと体を跳ね上げる。
それと同時に、
「う゛ぁあ゛ぁぁあぁぁ゛ぁーー!!」
聞こえてきたのは張り裂ける様な叫び声だった。この世の物とは思えない、断末魔のような悲鳴。
「……っ」
声が出なかった。
恐怖で心臓が飛び出そうなくらい早く動いている。驚きで目を見開いた顔は友人に見られたらきっと爆笑物だろう。
俺は少しでも早く逃げようと、門までの道を今まで生きてきた中で一番の早さで走った……気がする。
門の前に戻ると止めておいた自転車にまたがり早々に廃虚を後にした。
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