◆1◆ 古びた廃虚

6/11
前へ
/150ページ
次へ
「ハァっ……はぁ…はっ…」 住宅街まで孟スピードで自転車をこいだせいで、息は切れるし、汗も半端ない。もう散々だ。 《なんだったんだ今の!?めっちゃ怖ぇ……あれ?》 ない…ないない!ない!!何処を探しても見当たらない。 「俺の……ケータイ……」 やってしまった。 何処で落としたかは心あたりがある…。とゆうか、記憶を辿ると、どう考えてもあそこで落としている。 焦って駆け出した所、携帯が鳴った場所、叫び声が聞こえた瞬間、俺の手からすり抜けたのは紛れもなく携帯だった。 「……っあー!!」 顔に手を当て、その場にしゃがみこむ。 《やっちまった》 思いながらもとりあえず家に帰り、一部始終を家族に話したら馬鹿にされてしまった。 「夢でも見たんじゃないのか?寝ぼけてんなよー」 とか、 「いい歳して何言ってんのよ、ビビりすぎて幻聴聞いたんじゃないのー?」 とかとか、姉や父が茶化すように言ってくる。 一緒に取りに行ってやろうかと言われたが、馬鹿にされ、ふて腐れてしまった俺は、 「…明日一人で取りに行くからいい」 と、救いの手をはね退けてしまった。元々人は近よらない場所だし、盗まれる事はないだろう。 明日の放課後にでも、まだ明るい内に行けば怖くもない…と思いたい。 あれは幻聴だったのだと、不本意ながらも自分に言い聞かせ、飯を食べて風呂に入った。 嫌な事は忘れて、眠る事にしようと、布団に潜り込んだ。 ―――――――――
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加