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暦の上では大分前に春が立って、もうすぐ卒業を控えた僕らは、でも、たいして変化ない日常に依存して、ただ平凡に生きていた。
進学する僕。
就職する和也。
それでも、きっと僕らはこのまま年をとっていくのだろう。
今まで18年間、生まれた産婦人科が一緒だった僕らは、生まれたときからずっと幼馴染みだった。
それはとても居心地の良いことで。きっとこれからもずっとそうなんだろう。
「ところでさ」
本屋の帰り道、急に和也が切り出した。
「今、祭りの準備してるし、ちょっと下見に行かないか?」
「別にいいよ。屋台の場所を正確に把握しておくのは当日速やかに屋台をめぐるのに非常に重要なことだしね」
神社まで廻り道といってもそんなに距離は変わらないし、ということで、僕らはいそいそと向かった。心なしか、村の住民もなんだか浮き立っているようだった。
さて、その神社は小高い丘の上にある。小さな鳥居をくぐると鎮守の森を背に、お社がぽつんと立ってある。鳥居からお社までの間は、すでに露天が場所を鬩ぎあいながら立っていた。
僕らはせっせと準備している屋台を廻り、要チェックすべきところを把握した。
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