第一章 逆転シンデレラ

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──────…… さて視点は変わり、尖塔が幾つも立ち並ぶ石造りの城のダンスホールでは、城の後継者である王子の花嫁候補達が、思い思いのパートナーと踊り明かしておりました。 華やかな装いのドレスに包まれた筋骨隆々の花嫁候補達は、少しでも王子の気を引く為にクルクルと踊り回ります。 その一方で、ホールの片隅ではやたらと目つきの鋭い金の娘にガードされた紫の貴婦人が談笑する姿も見受けられるようです。 壮大なオーケストラの下、パーティーは滞りなく賑やかに進行されておりました。 しかし、ホール中央の階段上に鎮座する豪勢な椅子に腰掛けた王子はと言えば、端から浮かない顔をしているのでありました。 「うぅ………この中から花嫁を探せだなんて、藤堂ちゅ……父上もあんまりです…」 王子はクスンと半ベソになりました。 クリーム色の長い髪をゆるく編み上げた華奢な王子は、上は金の縁取りを施した優雅な藍色の式服を纏い、下は白亜のパンツを黒いブーツに突き入れると言う、質素ながらも品のある出で立ちをしております。 そんな淑やかささえ感じられる王子は、広間に集まったたくましい花嫁達に、あからさまに及び腰なのでした。 「……ど、どうしよう…」 「お気に召した娘はおられますか」 「ひゃああい!」 オロオロと戸惑ってばかりで行動に移せていない王子は、背後で影のように控えていた側近の言葉に飛び跳ねました。 「すっ…菫さん…」 「お声を掛けづらいようでしたら、私の方で見繕わせていただきますが」 「あっえ、えーと……!」 城内で統率された赤い衛兵服に身を纏った側近は、スッとくの字に体を折って王子の耳元に端正な顔を寄せます。 こぼれた銀糸の髪が美しい側近は、視線だけで広間を探ると、目に留まった花嫁候補を王子に薦め始めました。
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