第一章 逆転シンデレラ

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指をへし折られ、痛みに悶える魔法使いはさておき、シンデレラは屋敷の広間にある大きな姿見に自分の姿を写してみました。 全身を淡いピンクで統一されたドレスは、レースやフリルを何層にも重ねて仕立てられた上質なものです。 さり気なく施されたシルバーも、品位を損なわないデザインのものが選ばれていることが素人目ですら分かります。 加えて見事と言うべきなのは、両足を包むガラス細工の光沢に他ありません。 成人男性を支えて尚凛と光るその靴は、もはや匠の技としか言いようがありませんでした。 しかし色眼鏡はそのままです シンデレラは思いました。 「……ここまで女装が似合わへんといっそ清々しさすら覚えるわ…」と。 自分がしていることをドロドロと呪い出したシンデレラに、復活した魔法使いは腫れ物に触ると言った様子で話しかけました。 「えーと…とりあえず足は表に用意してあるからさ、そっちに行けばわかるぜ」 「もうなるようになったらええ…」 若干なげやりなシンデレラに、魔法使いはほんの少しの気まずさを覚えながら 一つの約束事をしました 「あ!これは絶対守ってほしい約束事なんだけど この魔法は12時で解けちまう仕組みなんだ 城の鐘が鳴り止む前に帰ってこいよ! でないと元のボロい服装に戻っちまうからな!」 「ああうん……了解…」 すっかり気勢の削がれたシンデレラは、ふらふらと屋敷の玄関へと向かいます。 その後ろ姿はいっそ哀れを誘うほど 魔法使いは心配そうにその様子を見守っていましたが、やがて自分の役目は果たしたとばかりにその場を立ち去るのでした。
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