第一章 逆転シンデレラ

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ふらふらと玄関のドアを開けたシンデレラ そこへ陽気な声が聞こえてきました 「やぁ、すこぶる不機嫌なシンデレラ! 今夜は最高に綺麗な夜空だね!」 「……………最悪や…」 家を出たシンデレラを待っていたのは、とんでもないサイズのカボチャに繋がれた二頭の白馬と、騎手台に座る濡羽玉の黒髪を高い位置でくくったご機嫌な優男なのでした。 特徴的な泣きぼくろの上から眼鏡を掛けたその男は、世界観などどこ吹く風と言った様子で、着古した青いシャツと黒いパンツの上に、所々薬品の飛んだ洗いざらしの白衣を纏っています。 座っているもの以外にファンタジー要素は皆無です。 「よりによってお前の送りかい穂波! つかなんでお前だけ格好変わってへんねん!」 「そりゃあ…」 シンデレラのもっともな指摘に、騎手は少しばかり虚を突かれたような顔をします。 しかし、すぐに指を三本立てた片手を目元に持ってくると、キラッと星でも飛ばせそうなウィンク付きの笑顔で応えました。 「魔法はなんでもありだからに決まってるじゃないか☆」 「……………」 シンデレラは臓腑の底からこの騎手ウゼェと思いました。
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