母の詩

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あのとき伝えられなかったこの想い。 音に変えて言葉で繋ぐ。 ♪ いつか、私の声は夜空に消えた 見上げた星は何処までも遠く 嗚呼、私の声は届かない だからせめて、そよ風よ 私の想いを届けてください 愛しいあなたに届かぬ声は 遠く、遠く、何処までも 空の彼方までも響くでしょう 私の想いは雪に溶け 貴方の元へ届くでしょう 暗い世界にただ独り 佇む貴方に届くでしょう 流れる涙は風に消え 微睡む獅子は荒野を駆けて 孤独な龍は月へと吠える 芽吹きし花は踊りだし 舞い散る花は谷を彩る そんな世界で唯一人 愛しい我が子を胸に抱き 春の訪れを歌いましょう ♪ ……この詩が何を言いたいのか私は知らない。 だけど、この歌を歌っていた母はいつでも優しく微笑んでいた。 その笑顔を見て、この歌はとても優しい歌なのだと思ったのは、 子供の頃の私が、そして今の私が、あの頃の母の笑顔が大好きだったからだ だからきっと、私はこの歌を歌うたび 優しい気持ちになれるだろう
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