名も無き少女の道行きは

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気が付いたら、私は既にそこに居て。 空に向かって伸びる竹に、そっと手を添えて歩いていた。 どれくらいの距離を歩いたのかも分からない。 振り返って来た道を見ても、地面の下を這いずりまわる竹の根のせいで足跡一つも付いていない。 仕方がないからまた、歩き出した。 ただ歩いているのも暇だから、あちらこちらを見回す。 こうして見てみるとずっと見ていたモノの筈なのに、初めて見たものばかりなような気がしてわくわくする。 膝の高さまで生い茂った草の隙間から、狐の子供がひょっこり顔を出していたり、小さい鳥達が可愛い声で鳴きながらじゃれあっていたり、名前も知らない花が草に隠れるように咲いている。 風が流れるたびにさわさわと竹の葉や草が音を立てた。 天気が良いことも相まってか、なんだかとても楽しい気分になってきて、鼻歌なんかも歌ってみた。
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