退屈な日常、変貌

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「ふぁ……あ……」 教室の窓際、最後尾で授業中にも関わらず欠伸をする男がいた。 隠す必要もない、この俺、徒神澪だ。 苗字が徒神と書いてトガミ、名前は澪と書いてレイだ。 俺は退屈が嫌いだ、暇な時間が嫌いだ。 今も通り過ぎてる時間を見過ごすということなのだから、時間とはそれを感じてこそ時間としての意味が生じる。 この世に存在する万物は、その価値を示してこその存在なのだ。 なぜこの世には価値のない物が無い……もしくは少ないか、それは価値の無い、存在を示せないものは抹消されてきたからだ。 だから俺は存在を示さなければいけない、だが無駄に存在を示すだけでは価値にはならない。 ……難しいものだ。 「ねぇ、澪……ここ聞きたいんだけど……いい?」 隣の席でノートに指差しながら聞いてきたのは橋森美奈、幼なじみだ。 「聞きたい?どれどれ……」 「ここ、鎌倉のとこ」 「……美奈、人に頼ってばかりじゃ駄目だぞ」 「あちゃ、わかんないんだ」 美奈が憎たらしく笑った。 ふん、わかんないもん! 俺は過去には目を向けないんだ、今が見えなくなるからな。 「じゃあここ、教えてくれよ」 「ほら澪、授業中だよ……シー……!」 返された、理不尽という名の核弾頭を容赦無く投げ返された。 かくして授業は終わった、さて、とりあえずあいつから紹介しよう。
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