退屈な日常、変貌

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そして迎えた日曜日、プールを目の当たりにした俺らは固まっていた。 もし後ろから誰かが見ていたなら、負のオーラが燃え上がっていただろう。 「これは……」 視界に広がるプールは二つ、しかもそれぞれが無駄にデカイときた。 そう、例えるならなんたら軍の本部に設置されてんのかという感じだ。 水抜きはされ、汚れも多いわけではないが…なぜプール掃除なのか、今わかった気がする。 「まぁ澪、仕方ないからやろうぜ」 「は?やろうじゃねぇだろ、やれよ」 「一人!?」 まぁ冗談はさておき、健太と俺はブラシを手に二つのプールの間に立った。 確かに二つともデカイのだが、左側のプールの方が幅が一列長い。 もしこの状況で左のプールを掃除したいって言える奴がいるなら来い、プールの底に顔面たたき付けてやるから。 「健太くん、俺は右側をやりたいなぁ」 「いえいえ澪くん、君は左の方がいいよ。似合うもん」 「は?普通に俺は右だから、だって俺奇数好きだし」 「奇数関係ありません~、俺右利きだし」 「じゃあ、じゃーんけーん……」 「え?ち、ちょっと待ってぇ!」 負けた。 まさか不意打ちに対してチョキを出すとは……こいつは脳神経が繋がってないんじゃないか? 今度ご飯に接着剤をかけてやろう。 その時だった…… 「澪、おっはー」 美奈がブラシを手にプールサイドに入ってきた。 わずかな期待が脳裏をよぎったが、それを蹴散らした。 RPGでこの手の登場をするやつは、だいたいの操作説明をした後作業を見守り、終わったら「なかなかの腕前ね」とか言って去っていくのだ。 「先生が澪とお馬鹿さんが生徒会作るためにプール掃除するって聞いたから手伝いに来たよ!……わざわざ休みの日に来てあげたんだから、感謝してよネ☆」 可愛く言うな、なんだその☆は。 スピードスターか、それを飛ばして俺をひんしにしたいのか? まぁ、予想外だったがありがたい、手伝って貰おう。 あとでラーメンでもおごることになりそうだがな。 「じゃ、今度チーズケーキね」 「……マジで?」 そしてなぜか健太もじっと見てきた。 「じゃあ俺はラーメン……」 「わかった、今度おごってくれ」 「俺がおごるの!?」
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