価値観

3/9
前へ
/64ページ
次へ
彼と出逢ったのは20歳の初夏。ナンパがキッカケ。 母の日の贈り物を百貨店で吟味してる私に彼がヒトメボレをした、ということになってる。 日傘にしようか、扇子にしようか迷っていた。 だけど婦人って、何で藤色が好きなんだろうねぇ。 好きが極まって、髪色まで藤子ちゃんになってる人もいるじゃん。母親がそんなご年配にならない事を祈ります・・・。 そんな私に声をかけたのが彼だった。 「ごはん食べない?」 藤色の扇子と日傘を持って思いに耽る私に声をかける中年男性。 明らかに迷惑顔で断る私に、彼は何回も言った。 「ジュ-スだけでも飲もう。」 「いりません。もう帰りますから。」 いい気になって冷たくあしらう私。 何回か熱心な誘いと冷たいお断りを二人で繰り返す。 店員さんが纏わりついてこないのは助かりますが。 ついに諦めた彼。 ‘やっと離れたかぁ~’ と彼が背中を向けて反対方向を歩き出したのを確認して、 私はまたフラフラ自分のアクセサリーなんかを見てた。  若い世代のブランドでも薄パープルのアクセがチラホラある。流行りかな~?? ‘オバサマの色’としか今まで見えなかったのに、有名メーカーから発売されてると、イイ色に見えくる。 モノを見る目って突如変わる。 モノには‘物’と‘者=人’がある。 そう気づかされるこれからの私の運命。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

120人が本棚に入れています
本棚に追加