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「電話番号教えてよ。」
と、彼が取り出したのは喫茶店の机にあるペ-パーナプキン。
「はぁっ?!自分の携帯は?」
「持ってない。俺、そういうのに縛られるの嫌だ。」
日焼けして真白な歯。
まだ早いタンクトップ姿が野獣を連想させる。
彼が携帯電話を持ってない、と言っても妙に納得してしまった。
「そぅですか。ハイハイ。」
嘘の番号を書いた。
彼はすぐ横の公衆電話でその番号を押す。
「…嘘じゃん!繋がらないって。ちゃんと書いて!!」
(電話番号教えるくらい、いっか。でる・出ないは自由だし。)
と、正直な番号を教えた。
それから彼は、
「店の準備があるから」
と言い、私を改札まで送ってくれた。14時過ぎ。
「毎日4回、電話するから。」
と言う彼に愛想笑い。
電車に乗ってすぐに着信。
公衆電話から。
「もしもし?」
「“俺、わかる?”」
「山名さん…。」
「“ヨシ、名前覚たな。じゃあ後で。”」
通話終了。変な人だな。
新手の勧誘とかで高い宝石とかツボとか買わされたらどうしよう…と悩む。
電話を無視すれば大丈夫!!
家まで20分。
部屋に戻って母親へのメッセージカードを書いてから、遅めの昼寝をすることにした。
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