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そう納得する刹那の言葉を出海は否定する。
出海「いや、そん時は問題なかったんだ。そもそも『鬼王』とはいえ、その姿は人と大して変わらなかったようだしな。その娘もスサノを気に入り、妻となって共に魔界に帰ったそうだ」
木乃香「なんやロマンチックやな~♪」
ネギ「そうですね」
夕映「では何が問題だったのですか?」
木乃香やネギの反応とは対照的に、夕映は真剣に訊ねた。
出海「……鬼王の妻として魔界に訪れた娘は『鬼姫』と呼ばれ、その美貌から民からも慕われていたそうだ。
けど、鬼王の妻が人間であることに不満を抱いた一部の臣下が、鬼姫を人間の貴族に売ったんだ」
話の流れに、聞き手に緊張が走る。
出海「無論、それに激怒した鬼王はその臣下を自らの手で処刑し、鬼姫を取り返すため単身で鬼姫を買い取った貴族の屋敷に乗り込んだ」
そこで出海はわざとらしく言葉を切る。
それに堪えきれず、明日菜が真っ先に訊く。
明日菜「そ、それで?」
出海「……鬼姫は、その美貌を永遠に眺めんと考えた貴族に殺され、剥製の人形とされていた」
────────!
戦慄する一同を一瞥すると、出海は話を続けた。
出海「それを見た鬼王は屋敷の全ての人間を殺した後、精鋭の臣下を呼び、人間界を蹂躙せんと手始めに貴族の集まる京都を襲撃したんだ」
それがおよそ一五〇〇年前に起きた出来事。
出海「まだ神鳴流どころか陰陽師もまともにいなかった人間にはなす術はなかった。もはや都は亡びるところまでいった」
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