その男 相楽出海

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『ここ、日本だよな……?』 初めてここに来た感想はまずそれだったのは、忘れるまでもない。 そんな物思いに老けながら相楽出海は〝世界樹〟──それは麻帆良学園にある巨大な大樹であり正式名は〝神木・蟠桃〟という魔法の樹──の太い枝の上で惰眠を貪っていた。 そして風に自らの黒髪を靡かせ、陽の柔かな陽気に当たっていると、 「捜したよ、出海君」 聞き覚えのある男性の声が耳に届き、重たげに瞼を開かせて漆黒の瞳を露にする。 目の前にいたのはダンディースマイルを浮かべる高畑・T・タカミチ。この麻帆良学園の魔法先生の一人である。 出海「あ、タカミチさん。どうかしたんすか?」 寝転がった体勢のままタカミチを見上げて訊ねる。 そんな出海の年上に対して失礼とも言える態度を気にした風もせず、用件を伝える。 タカミチ「ああ、学園長がお呼びだよ」 出海「爺が?」 一体何の用だ? 出海は今、女子中等部校舎にいる。なぜかって? それはどういう訳か学園長室が女子中等部校舎内にあるからだ。 まぁそれにも事情がないわけではないが。 学園長室の前に着くと出海はドアをノックする。 「開いとるよ~」 学園長の年寄りながらの陽気な声が聞こえたので扉を開いた。
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