その男 相楽出海

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「む?」 僅かに灯りが照らす暗闇の中、視線を張り巡らすと、近くの建物の屋根の上で人影が立っていた。 「誰──ンダクションッ! ……かぁ、やっぱ晒しだけはキツいか?」 出海の晒しが巻かれただけの露出した足を見ていると、 チャキ 「ん?」 「動くな! 何者だ!?」 首に冷たく長い何かが添えられ、凛とした声が耳元に響いた。その声からして正体は把握出来たが完全に後ろを捕られた。 「ふむ。速いな」 良い動きだ。 「ここで何をしている!?」 「まぁ、落ち着けって。それと……その得物を外してくれ」 危ない危ない。 「動くな! 何者かと訊いているんだ!」 フム。こう訊かれたら正直に答えようか。 「あぁ、麻帆良学園男子中等部2年B組の相楽出海だけど」 「え?」 後ろから間の抜けた声が聞こえた。 「とりあえず刀下ろしてくれ。信用ないならその腰の刀、取っていいから」 「…………」 やはりまだ警戒しているのか、首筋から刀身を外してくれると、離れながら出海の刀を抜き取った。 出海も一息置いて、振り返った。 そして目の前の人物、当に剣を握る大和撫子と呼ぶに相応しい黒のサイドポニーテールが特徴の少女、桜咲刹那の警戒心を露にする鋭い眼光を見て、微笑う。
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