金曜日に狐を拾う

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 「そもそもさ、その頃の俺にさ、野生の狐に菓子やったなんて大イベントあったら、覚えてると思うんだよね」  「そんなの・・・」  「だから、別の奴かも知れないぜ?何も俺に固執するこたないんだろ?耳尻尾触っといて何を今更、って思うかも知れないけどさぁ」  苑は少し俯き、搾り出すような声で言った。  「でも・・・子供の頃の話ですから・・・忘れてるだけです」  「そうは言うけど、」  「忘れてるだけなんです。絶対思い出します」  何の根拠もなく、苑は言う。声も震えているように感じる。  参ったな・・・と、春喜はどうしようもなく立ち尽くす。  本当に狐を助けたなんて記憶なんてない。絶対とは言わないが、別の奴なんじゃないかと思う。  たまたま知ってたのが俺で、それはなんかの手違いだったんだ。なんでかは知らないが。  それでも、この子は十年経って、神になって人になってまで、ここまでたどり着いたのだ。  律儀というか単純というか、とにかくバカが付きそうな子だけど。  ただ、ここだけを頼りにして、ここまで来たんだ。知っているのも匂いだけで、わざわざ遠くから。
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