金曜日に狐を拾う

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 その笑顔があまりにも綺麗だったので、春喜は思わず見とれてしまった。  はっと我に返ると、邪(よこしま)な思いを掻き消すように、わざとらしい咳をする。  「た、ただし、本物の恩返しの相手とか見付かったら、それまでだ」  「えっ!?な、なんでですか!」  「そりゃ、人・・・?でいいか、人一人無償で養うって大変なことだろ?」  「あう・・・」  苑は不等号を合わせた感じの目をしてショックを受けた。  春喜の読み通り、お金とかの類いは持ってなさそうだ。  じゃあどうやってここまで来たんだろうな、と思考にふけると、苑は再び必死になってアピールしてきた。  「あ、あのですね!恩返しです!ちゃんと恩返ししますから!」  「ああ、うん・・・そっか、それならいいか。まぁ別に期待してないけど」  「ダメですか!?釣り合いませんか、対価!」  興奮すると、手を広げてパタパタするらしい。羽ばたこうとするヒナみたいな。  とりあえず落ち着け、と春喜はそれを止めさせる。  「釣り合う釣り合わないは今はいい。ともかくな、俺ん家は拠点とでも思ってくれりゃいいから」
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