見よ!キッチンは赤く燃えている!

18/26
前へ
/69ページ
次へ
 「・・・じゃあお言葉に甘えまして」  徐々に笑顔が戻ってきた苑は、ぱたぱた小走りでそこを離れた。  一体何事かと思っていると、苑はすぐに帰ってきた。  その手には、どこから持ってきたのか、落ち着いた柄の着物一式。  「えへへ、これくらいならいいですよね?」  春喜は震えながら、一応値札に手を伸ばす。  じっくり考慮したあと、結局苑の頭をはたいた。  「お前はまず金銭感覚を覚えろ」  「きゃんっ!」  結局、春喜はなるべくリーズナブルなのを苑に選んでやった。  「・・・それからあとは・・・」  苑に遠慮なく荷物を全部持たせ(しかし苑は平気な顔をしていた。かなりの重さのはずなのに)、次の生活必需品を買いに行こうとする春喜だったが・・・。  おもむろに足を止めた。  苑がそれに気が付いて振り返ると、春喜は神妙な顔をしていた。  「春喜さん、どうしたんですか?」  「いや・・・俺は、この先には行けない」  「? 何訳のわかんないこと言ってんですか。ほら、早く行きましょうよ」  苑が先を促すものの、春喜は一向に動く気配がなかった。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加