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「たのもーっ!」
一一あれから二日後、特にやることもない昼下がり。
「たのもーっ!」
「・・・」
いや、施錠してなかった俺が悪いとも言えるんだけど、と、春喜はそのうるさい人物を見遣った。
茶髪・・・とは言っても苑とは違う、焦げ茶色だ・・・のくりくりくせっ毛ショート、そしていかにもな感じの丸い耳、丸っこい茶の尻尾。
勿論、耳というのは人のものではない。だからといって、尻尾があるから四足の獣という訳ではない。
そう、苑と同じ人型の異型なのだった。
「たのもーっ!」
が、なんでここで叫んでいるのかと言えば、ついさっき入って来たからである。
いや、不法侵入と言ってもいいだろう。
いきなり押し入ってきたっつーかなんつーか。強襲だった。蹴破って来た。玄関のドア壊れた。
「たのもーっ!」
そして、第一声と同じ道場破りみたいなことを、変わらず叫び続けている。
もちろん相手は春喜ではない・・・空気のように見もしなかったのだから・・・彼女の視線の先にいる、部屋着は巫女服のあの子だ。
しかし、見向きもしない。
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