160人が本棚に入れています
本棚に追加
/69ページ
明らかに自分に向けて呼び掛けているのに、巫女服の苑ちゃんは見向きもしなかった。
「たのも~っ!」
おかげで彼女、無視されてるからか涙声になってきている。
いくら自分ん家が壊されたからって、可哀相と思わざるを得ない春喜だった。
そのため、春喜は道場破りに同情し、代わりに声をかけてやることにした。
「・・・なぁ、苑ちゃん」
「はい、なんでしょうか」
苑は春喜の声にのみ反応し、笑顔で可憐に振り向いた。
なんか女の子って怖いな、と知ってしまった休日の昼。
「そこの子、苑ちゃんに用があるっぽいけど・・・」
「え?ああ、台風でゴミが入って来たと思って放置してました、失敬失敬」
そうして、苑ちゃんはやっと来訪者の方へ向いた。
「で、春喜さん。今日可燃ゴミの日なんですよね」
「ゴミという認識が変わっていなかった!」
苑ちゃん、末恐ろしい子。
「わ、私はゴミじゃなぁいっ!」
そして、やっと彼女はたのもーっ!以外の言葉を発する。
「うわぁ、春喜さん。最近のゴミは喋りますよ」
「そろそろその子泣くからやめときな」
最初のコメントを投稿しよう!