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一体何なんだと言わんばかりに怪訝な表情を浮かべる少女達は、どれほどの状況下におかれているか理解出来ていないらしい。
仁王立ちする春喜から、再び地獄の低音が響き渡る。
「罪を自覚しない大馬鹿者共よ、恥を知り悔い改める猶予をやろう」
さながら閻魔大王に裁かれる死霊の図であった。
「は?何様ですか春喜さん。裁判長にでもなったつもりですか」
「お前こそ何様だ、恩返しの居候!」
今のところただの疫病神でしかないし。
「時に君・・・いきなり不法侵入した上に脈絡なくバトりやがって・・・せめて名乗れ!」
「うん?知らない?」
「知らねぇよ!聞いてねぇよ!誰だよお前!みんな思ってるよ!」
「あの、春喜さん?みんなって誰ですか?」
苑の言葉は聞こえませんでした。
「ふん!人間なんかに名乗る名前なんかない!」
「春喜さん、このゴミクズは桃瑪瑙 明(ももめの あかり)という化け狸です」
見知らぬ少女の説明は、結局のところ知り合いだった苑がしてしまった。
桃瑪瑙明・・・妙に豪勢な名前で、かつ、その焦げ茶の丸耳と尻尾は狸のものだったらしい。
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