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よく晴れた休日の朝。
世間一般では仕事に疲れたお父様の休める有り難い日であり、また家族サービスをしなくてはいけないという、なんとも憎たらしい日でもある。
そして舞台はとあるボロアパートの一室。
「……。」
結婚している訳でもなく、ましてや彼女すら居ないという何とも平凡な青年がその部屋主として住んでいる。
青年は居間の畳の上に座り込み、手にしている物を食い入る様に見つめていた。
それは紛れもない預金通帳であり、そして一番最後の列の額の欄には『2,000,000』と黒インクでしっかりと記入されている。
「遂に……。」
ぽつり。と小さくも噛み締めるように青年は呟いた。
「遂に……。夢が叶う!!!!」
さっきの小さな呟きから大きく声を張り上げた青年。
今にでも小躍りしそうだか、すんでのところで気持ちを押さえつけている、っといった感じだろう。
そして青年の周りに散らばった雑誌。
その中の一冊には、『ある場所』を赤のマーカーでマル印をしたページが開かれていた。
「待ってろマイカー!!!! 待ってろエンスー達!!!!」
未だに心底嬉しそうな叫び声を上げる青年。
後に叫び声のせいで、お隣さんと大家さんに怒られることを、少年は未だ知るよしもない。
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