・禁忌の森

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少年は震える手でその便箋の封を切る。 その様子を村のみんなが固唾をのんで、見守っていた…。 「…っ」 彼は深呼吸をすると勢いよく手紙を開くとそこに書かれた文字に肩を落とした。 そこには《学科試験通過》の文字。 周囲は少年の満面の笑顔に結果を知ったのか、 「へへっ!俺の勝ち!」 「ちくしょう…負けた!」 とか不謹慎な賭け事の結果に喜ぶものや落胆するものがいた。 「何度いったらわかるんだい!あんたら!うちの息子の受験を賭け事にすんじゃないよ!」 「ギャアアア!マーサだ!逃げろ!」 そう、この物語の少年ヒムカ・サラは今年で四度目の受験でようやく一次試験の学科を通過したのであった。 ここは精霊と人が共存する国・ジハール 自然あふれる大国で、精霊の助力で国は守られ、人々の助力で精霊は住む場所を得ている。 いわゆる持ちつ持たれずの関係である。 精霊とは自然界が生みだした高エネルギーの意識体で、人間とは違い霊的存在である。 精霊は様々な姿をしており 人間型もいれば魔物の様な精霊達がいる。彼らの声は普通の人間には聞こえない。 種族の違う精霊とジハールの国民は姿は見る事ができるが、言葉を通わせる事はできない。 そこで人と精霊を繋ぐ仕事の者がいた。 それが伝霊師である。 精霊の声は通常霊波と呼ばれる音波で響く。 人の声は空気の振動で伝わる様に精霊の場合、霊力が振動する事で音になる。 だから通常の人間には聞こえない。 だが、稀にその霊力を持つ人間がいる。 そう言う人間は精霊の声も聞けるし言葉を交わす事ができる。 人々は彼らを伝霊師と呼んだ。 伝霊師は精霊と人々を繋ぐ要の存在とされ、古きよき時代から珍重され、ジハールでは国家資格の最上級職として今なお国政に欠かせない存在になっている。 また、伝霊師が精霊と専属契約すれば、精霊はその伝霊師に惜しみなく力を貸す。 精霊はどのような最新兵器でも敵わない絶大な力を持つ。 が、彼ら精霊が力を使うのは契約した伝霊師の要請したときのみである。 つまり、伝霊師は戦力としても貴重な存在なのだ。
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