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「存在を隠すって…どうやってやんだよ。会議ですでに俺の事を報告したんだろ?それに俺が封珠のピアス着けてるだけでバレんじゃ…」
困惑するヒムカに隣に座るオズワルドも「確かに」と頷く。
シリウスやモーゼスもそれは必要だと感じていたようで、頷くと、シリウスが懐から何か小さな包みを取り出し、そっとヒムカの前にそれをおく。
「会議ではお前の名前は出していない。ただ、5人目の福音子がいるとだけ報告している。ピアスはこれでなんとかしろ。」
「…これは?」
「我が、レンブラント伯爵家の紋章いりのイヤーカフスだ。」
その言葉にヒムカ以外の四人の福音子達は目を見開いた。
「イヤーカフス…?」
「…耳に着ける装身具の一種だ。貴族の人間の身嗜みにも使われているから、この学院に通う貴族の子息達も愛用している者も多い。お前がこれを封珠のピアスの上に着けることで宝珠のピアスの存在は隠せるだろう」
確かにこれなら耳たぶをふっぽり覆うことはできる…が、
「なんで将軍の紋章なんですか!」
そう、それが問題だ。キルシュの激昂にヒムカはポカンとしているが、キルシュと違って周りはどこか「あ、なるほど」と言った感じで納得した表情をしている。独り取り残されたヒムカは訳がわからず、フィンシアをみれば、彼女は苦笑した。
「…ヒムカさん…シリウス様の家紋をイヤーカフスに着けると言うことは、ヒムカさんがシリウス様の子息と言っていることになるんですよ…」
「は?」
間の抜けた表情にテトは可笑しそうにクスクスと笑う。
「僕ら、福音子が入るクラスは特別学級で貴族の子女ばかりなんだよね~。ヒム君は平民だから入れないし…それじゃ、僕らと同じカリキュラムは受けられないでしょ~?だから、形だけヒム君はシリウス将軍の息子となることで、僕らと同じクラスに入れるんだよ」
「ゲ、マジか。」
「…でも、貴族でも優秀な生徒ならば養子縁組みをする方もいらっしゃるので、ヒムカさんがシリウス様の養子になっても問題はないと、思います。」
「…それって青田買いってやつか?」
「は、はい…平たく言えば…」
間延びしたテトとフィンシアの言葉にキルシュは歯ぎしりしながら、向かいに座るヒムカを睨み付ける。
「僕は認めんぞ!お前なんかが貴族だと名乗るなぞおこがましい!」
「おこがましい…って、これは将軍達の意向だろ?俺がなりたいって言ったわけじゃねぇ」
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