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「やれやれ、まるで幼児の癇癪のようだね。」
呆れたようにヒムカとオズワルドが言えば、キルシュは顔を烈火の如く真っ赤にして黙り込む。
「キルシュ君はシリウス将軍の大ファンだもんねぇ~。ヒムカ君が大好きなシリウス将軍の息子になるのが羨ましいんだよ。」
「なっ…!!ぼ、僕は福音子として尊敬しているだけだ!べ、別に…将軍ごっこしてる、そこらの子供達と一緒にされては困る!」
慌てて否定するキルシュをオズワルドとヒムカは「こいつ絶対将軍ごっこやってたな」と冷ややかな視線を向ける。
将軍ごっこは今や庶民から貴族まで共通する男子の遊びだ。フィンシアは将軍ごっこを知らないのか首を傾げた。
「…くだらない雑談は控えろ。それよりまだ、変更した点がいくつかある。ちゃんと聴いておけ」
シリウスは無駄のないスルースキルを発動すると、脱線した5人を本題に戻す。
「通常通りお前達福音子4人は特別寮に入るが、ヒムカは通常の学生寮に入って貰う。」
「…ヒムカが福音子だと悟られないためですね。」
「そうだ。しかし、形だけ寮に所属するが、実際は私の家から学院に通う事になる。」
「なっ!どうしてですか!」
それは事実上、ヒムカとシリウスが一緒に暮らすと言う事だ
「表面上は貴族としての教養を学ばせるためだが、実際は福音子としての能力安定をさせるためだ。それはヒムカにも了解を得ている。」
「…あんたの養子になる事はきいちゃいないがな」
「でも、シリウス将軍。将軍と一緒に暮らすだけで、ヒムカが5人目の福音子だと疑われるんじゃ…」
「5人目の福音子は学院の生徒であるとは言ってはいないし、元々神殿と相談して、現在5人目の福音子は大神殿に保護されている事になっている。実際、私は独り身で子がいないから、次期レンブラント伯爵を育てていると言えば、それ以上、深入りして聴いてくる馬鹿はいないだろう。」
確かに、精霊の加護を強くもち、この国でも最強をほこる将軍にそんな突っ込んだ質問をする輩はいないだろう。
「…凄い根回しですね。それほどヒムカを守ろうとするなんて…合理的で、冷徹て呼ばれる将軍らしくない。」
剣呑とした表情でオズワルドが問えば、シリウスは「確かにらしくはないな」と肯定する。
「…しかし、それは全て国王陛下のご意志だ。私はそれを忠実に守るだけのこと」
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