プロローグ

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明るい陽射しが惜しみなく天窓から降り注ぐ。 温かい光が、じんわりと体をあたためてくれる。 光の中に浮かぶ塵が、ちらちら輝いて見えた。 天窓の回りに施した控えめなステンドグラスが、穏やかな光に華やかさを添える。 天窓の外は、抜けるような青。 窓の向こうの青を見つめていたルーイは、人の気配に気づいて視線を移した。 この部屋に続く、唯一の扉。 「……おいで。いるんだろ?」 ルーイの声の後、数秒の間を置いて扉が軋んだ音を立てた。 入ってきた子を見て、思わず顔が綻ぶ。 しかしその子は笑っていなかった。 短い金髪に、大きな瞳。 ズボンを履き腰に剣を下げているが、どうみても少女だった。 ジェイを小さくしたような幼い頃を思うと、少し女になっているのを感じる。 その表情は、ルーイの予想通り固く強ばっていた。 「来ると思ってたよ」 ルーイがそう言うと、少女の表情は更に険しくなる。  
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