拉致られ凡人

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「おや?お目覚めかぃ?」 姿を表したのは、眼鏡をかけたスラリとした体型の背の高い男。 格好は、きっちりと閉めたネクタイに白のカッターシャツ、それを包むベスト、最後に黒の糊のきいた上等そうなパンツだ。 キリッとした涼しい眼差しをしているが、それは笑みを伴うと目尻が下に下がりなんとも柔和そう。 年は・・・20後半から30前半ってとこか? 突然現れた男に口を開けて、見入っていると男はニコニコと笑みを浮かべながら近づいてきた。 あまりにも優しい笑みなので、危機感を感じず、体は身構えもしなかった。 男は、ストンとベットの隣に置いてあったアンティークな椅子に腰かける。 長い足を組みながら。 「あまりにも眠っていたから、目が覚めないかと思ってたよ」 「は、はぁ・・・」 「いや、きっと魚住のことだから少々強めに手刀を首に入れたんだろうね。あの子は、手加減を知らないから。あとでキツく言っておくよ」 魚住・・・。 あの秘書みたいな女の人のことかな。 ってか、あの人が殴ったの!? ものすごく、痛かったんだけど!! ってか、女の人に殴られて気失ったの俺!? 二重なショックに、頭がぐるぐると混乱する。 いや、ショックだけじゃない。 まだこの状況を理解できないんだ。 きっと今目ぐるぐる回ってるんじゃないかな。
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