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「ま、でも君が気づいてくれてよかったよ。伊藤和泉君」
「・・・・・・へ?」
「あのまま眠られたら、こっちだって何かあったんじゃないかって心配だからね」
い、いや。
そんなことじゃなくて、
い、今・・・。
「・・・・・俺の、名前━━?」
キョトンとして男を見つめる。
目があった男は、ニッコリと優しげな笑みを浮かべた。
「何故君を知ってるか、かぃ?答えは簡単さ、調べたんだ」
「し、調べた・・・?」
自分の知らないところで、思いもしないことが起きていたのに驚いて、オウムのように復唱した。
男はもう一度笑って、涼しげな瞳を閉じた。
まるで、歌を歌うかのように言葉を紡ぐ。
「伊藤和泉。20歳。11月生まれ乙女座のA型。明義大学経済学部2年。現在、大学近くのアパートで一人暮らし。朝昼晩問わずバイトに明け暮れ、現在掛け持ち5個。特技は料理・自転車漕ぎ、スポーツ全般。好きなものは、肉・魚。嫌いなものは、ピーマン、人参。座右の銘は、働かざる者、食うべからず。幼少期の夢は、パイロット」
「・・・・・なんなら、スリーサイズでも言ってみようか?」
口を開けてポカンと見ている俺に、挑戦的な言葉で微笑む男。
そこには先程感じた、優しい笑みではなく。
ニヤリと狡さを感じるからかわれたかのような笑みだった。
カァッと顔が赤くなる。
ば、バカにされた?
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