拉致られ凡人

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ドアノブを思いっきり下に押して、力を入れた。 しかし、ドアは無情にもガチャガチャという金属の音がするだけ。 鍵・・・かけられてる! チャンスから一気にピンチへ。 絶体絶命な状況に、血の気は引くし、冷や汗はダラダラだ。 「全く、トイレにでも行きたいのかぃ?」 背後に聞こえる足音。 それはだんだん大きくなり、こちらに近づいてくる。 くるりと振り返って、男を確認する。 相変わらず、ニコニコと優しげな笑みを浮かべていた。 だけど、俺にはそれが誘拐犯の楽しげな笑みにか見えない。 さぁ、これからどうしてやろうかという具合の。 「や、やめろっ!こっ、こっちにくんなっ!」 「どうして?それままじゃ、鍵かかってるから外に出れないだろう?」 「う、うるさいっ!とにかく、来んなよっ!!」 震える声で精一杯叫ぶ。 だけどそれはただの虚勢で体はブルブルと震えている。 男は眉をひそめて、また首をかしげた。
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