拉致られ凡人

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「寒いのか?震えてるぞ」 怪訝そうな男の顔。 震える俺の腕を、細くて大きくな手がガッシリと掴む。 細い体型だから、そんなに筋肉ないと思うのに。 なんでコイツこんなに力強いんだよっ!! 「は、離せっ!離せ!」 恐怖で震える体を、頑張って四方八方に暴れさせる。 男は俺の暴れに、むっと眉をひそめたが手の力は緩めない。 「ちょっと静かにしてくれないか」 やれやれと溜め息つくと、腕を掴んでないもう一つの手が俺の腰に触れる。 少し力を入れれば、俺の体は簡単によろめいて。 自然と男の方へと体を寄せられる形になった。 寄せられた時に、額が男の厚い胸板にコツンとぶつかる。 「ー・・へっ?な、何っ」 間抜けな声で、自分より頭一つ分背の高い男を見上げる。 するとそこには、先程の優しげな笑みがなかった。 眼鏡の奥の黒い瞳は、真剣な眼差しで俺を見下ろしてる。 その鋭い眼差しで、一心に見つめられるとドキンと胸が高鳴った。 ・・・な、なんだ?これ? 男は黙って、俺の腰から片手を離す。
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