拉致られ凡人

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自由になった片手は、俺の目の前にかざされた。 反射的にキュッと目を瞑った。 ピタリ。 額に触れる大きな手。 「・・・うん、熱はないみたいだね」 「・・・へ?」 「そんなに魚住の手刀強かったのかな?顔色も悪いし、体は震えてる。あれ、汗もかいてるじゃないか」 「い、いや。あの、そ、それは、熱じゃなくて・・・」 「やっぱり、魚住にはキツく言っておかないとなぁ。この前だって、一人やっちゃったしなぁ」 「やっちゃったの!?そんな人に俺、殴られたの!?」 俺の言う分なんか気にしないで、男はブツブツ何か言っている。 まぁ、俺も突っ込み入れてるんだけど。 なんというか、さっきのシリアス的な場面とは打って変わって一気にコメディ・・・になった気が。 そのやり取りがずっと続いてる最中。 ガチャリと鍵がかかっているはずの扉が、開く。 「・・・・・・何をしていらっしゃるんですか、御二方」 淡々とした表情のない様子で、呟く。 細い指がカチャリと、眼鏡を鼻に押し戻した。 扉の向こうに立っているのは、今噂になっていた人物。 魚住。
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