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「何やってるとは、心外だなぁ。今、君の必殺手刀がいかに殺傷力があるか話し合っていた所なのに」
「私の手刀は、どこにでもある平凡な空手道場で普通の師範に習った空手の技の極一部に過ぎません。まるで殺人兵器みたいな言い方は止めてください」
「ハハハ、誰も兵器なんて言っていないだろう?立派な必殺技だって誉めたんだよ」
「では、秘書と言うこの職業についてから培われたものでしょうか。どこぞの上司がいっつも仕事をせずに、呆け回っているのを抑制するために」
「ハハハ、誰だろうね。同情するよ。怖い君の手刀にいつも恐怖している可哀想な上司とやらに」
ギスギスとした空気が二人の間に渦巻く。
男はさっきみたいにニコニコ笑いながら、毒を吐き。女は無表情を崩さずに毒を吐く。
なんとも怖いんですけど・・・。
まるで戦争の中に挟まれたような、俺は完全に頭がショートした。
何でもいいから、ここから出して!!
毒の吐き合いは、女の深い溜め息によって終止符を打たれた。
「御戯れもいい加減にしてください、理人さん。この様子では、伊藤様にも今回の事態を知らせてはいないのでは?」
チラリと眼鏡が、男の胸元に寄せられる俺へと視線が向けられる。
ハッと一気に我に戻り、急いで腕を突っぱねて男からベリッと体を引き剥がした。
一気に距離を作り離れる俺に、男は首をかしげた。
「おや、そうだったね」
「全く・・・、貴方という方は」
「でもここじゃ、なんとも格好がつかないなぁ」
その言葉で、俺たちは部屋を移動する。
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