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「さて、じゃあ話としようか。伊藤和泉くん?」
通されたのは、大きなリビングルーム。
柔らかな2人掛けのソファーに俺は腰かける。
目の前には、茶托に乗せられた湯気のたつ緑茶。
香ばしい茶葉の香りが、鼻をくすぐる。
そして隣には綺麗な京菓子。
男は俺の向かえの1人掛けのソファーに、足を組み座っている。
ニコニコとした顔は、崩さないままだ。
「おっと、その前に僕の名前を名乗らなきゃね。僕は、東條寺 理人。よろしくね」
ニッコリとした満面の笑みで、目の前に差し出される大きな手。
キョトンとした顔で、見つめるとん?という顔をされた。
「は、はぁ・・・」
まだ多すぎる謎は全く消えないけど、差し出された手をギュッと掴む。
垂れていた涼しい目元が更に垂れて、満足そうにウンウンと頷いた。
「・・・理人さん、本題へ」
「おぉ、そうだった」
どうも歳を取ると横道にそれて、行けないねぇと呟く。
いや、アンタそんなに歳食ってないだろ?
って突っ込みたいけど、まだ警戒心からなんとも言えない。
「んーとね、和泉くん。話っていうのは簡単なことなんだ」
「はぁ・・・」
大きな手が、湯飲みを持ちズズッと啜る。
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