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すると女は、失礼っと早口で言うと携帯を耳に当てる。
俺は早くバイトに行けばいいのに、馬鹿みたいに口開けて突っ立ってた。
『もしもし、こちら魚住。
ターゲット確保しました』
「はっ?」
え、あの。
今、ターゲットって・・・?
「一体どういうこと・・・」
そう言いかけた、刹那。
ブゥゥンっと大きなエンジン音を上げて、真横に黒塗りの車が通りかかった。
ポカンと口を開けている、俺の真横に停まる。
女は、ふぅっと溜め息をつきながらパタンと折り畳み式の携帯を畳む。
申し訳なさそうに目を伏せながら。
「申し訳ありません。伊藤様。ですが・・・」
「次期に解ることでございます」
パタン。
携帯が折り畳まれる音が合図。
急に車の扉が開き、サングラスしたスーツ姿のがっちりした男が数人降りてきた。
呆気に取られている俺の体を意図も簡単に確保する。
「な、なんっー!!」
やっと出た声は、唇に当てられたタオルによってかきけされた。
「んんっ!んー!ん!」
体も口も自由を失った俺。
細くて貧弱な体は、簡単に数人の男達によって無理やり車に押し込まれる。
あ、自転車が倒れた。
しかしそんなのは気にもかけない。
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